Finland Travel Diary

フィンランドとその周辺旅行記

ヘルシンキ旅行TIPS

2023年5月にフィンランドを訪れた時に持っていってよかったものなど。夏に訪れる人の参考になれば幸いです。 

 

Wi-Fi 

もしあまりネットを使う機会がなく過ごしている場合は、公共機関やホテルのWi-Fiだけでも十分かもしれないが、私はGoogle Mapを街中でもよく使うのでDNAという会社のSIMカードヘルシンキの空港で購入した。DNAのSIMカードはよく旅行者も紹介しており、初めて利用する私にも簡単に使う事ができた。 

ヘルシンキの空港内にあるコンビニのレジ近くに置いてあるものを購入、その場で利用期間を指定して支払いをした。スマホの電源を一度落とし、SIMカードを日本で利用しているものと交換し、電源を入れればすぐ利用できる状態だったので、とても楽だった。フィンランドで一度アクティブにすれば、その後のスウェーデンでも追加料金無しで使う事が出来たし、次もDNA一択!というのが使用の感想。

 

現金 

驚いたことに2023年の旅行では現金を使う場面がなかった。ヘルシンキ中央駅のトイレもコロナ前と違いカード払いのみになっていたし、完全にカード社会に変わっていた印象がある。地方でバスに乗る場合もカード払いだった。もちろん心配があれば少しユーロを持っていってもいいけれど、あえて使う場面はもう無いはずだ。

 

服装 

日本の初夏〜夏の気候からすればヘルシンキは寒いものの、冬の寒さではないので2〜3日で慣れる。ヘルシンキの場合、夏でも風は冷たいので、ニットのカーディガンよりはジャケットのような風を通さない上着の方が重宝した。もちろん暑い日は半袖で十分なので、脱ぎ着できる服装だとストレスなく過ごせる。夏でも天気が悪い日は日中が11度の時があったので、ヒートテックを1枚持っていくと安心だと思う。 5月も8月も必須なのはサングラスで、強烈な日差しが心配なら帽子や日傘があってもいい。

 

その他 

初めて自然公園を訪れたとき、虫除けスプレーを持って来なかったことを後悔した。とにかく夏の森は虫が多く、肌を出していると刺されやすい。私は一度だけ刺されて、かなり腫れて治るのに半年もかかった(アレルギー体質で、治りにくいというのもある)刺されてからの薬より刺されないようにする方がいいように思う。また、夏といえどもホテルの客室内は乾燥するのでいつも冬用のボディークリームを持っていっている。 

日本だと当たり前にホテルに歯ブラシがついているけれど、フィンランドはもう歯ブラシは置かなくなった印象がある。フィンエアービジネスクラスですら歯ブラシが無い。日本から持って行ったほうが煩わしくないと思う。

フィンランドを感じる-自然公園編

 

ヘルシンキ近郊のほとんどの観光場所は一度しか訪れたことがない。唯一、アウランコ自然公園だけ二度訪れた。アウランコ自然公園はヘルシンキから日帰りで行ける自然公園の一つであるにも関わらず、ヘルシンキからの日帰り公園は大抵ヌークシオを紹介されるので影が薄い。おそらく人工公園である事が大きな理由だろう、それでも私はアウランコを一度訪れたらすっかり気に入ってしまった。道が比較的舗装されているので歩きやすいこと、公園入り口にホテルがあるのでそこを拠点に散策が出来ることなどの利便性が理由でもあるが、とにかく公園内の展望台から見渡せる360度森の世界が、フィンランドに来たという実感と静かな興奮を与えてくれた。画家の東山魁夷アウランコを気に入っていたというのも頷ける。 

 

自然公園へは、まずヘルシンキ駅からVRでハメーンリンナ駅に向かう。VRフィンランドの長距離列車で全席指定、事前にホームページから購入が出来る。購入すると登録したメールアドレスにチケットが届くので、当日VRに乗車した際、スタッフのチェックがあればそれを見せる、という流れになっている。ハメーンリンナ駅からはバスに乗車するが、バス案内は生憎Google Mapでは表示されない。ハメーンリンナの市のホームページからタイムテーブルを検索し、2Uのバスで自然公園入り口にあるホテルScandic Aulankoで下車した。フィンランドのバスの運転手さんは皆優しいので、どこで降りたいと乗車時に伝えるとバス停に着いた時知らせてくれる(私は不安がある時はいつも知らせて欲しいとお願いしている) ホテルのトイレをお借りして、地図を貰えば準備万端。 

 

公園内は多くの道が舗装されているので比較的サクサクと歩くことができる。道には時々案内板が出ていて、地図とその案内板を見ていれば展望台へと迷わず進むことができた。自然の多いエリアに住んでいる人にとっては物足りないのかもしれないけれど、普段自然とは全く無縁の私からすれば綺麗な空気を吸いながら森の中を歩くだけでも癒された。森の中を進んでいくと展望台が見えてくる。展望台(Aulanko Observation Tower)は無料で入れるが、季節によって開いている時間が違う。展望台の階段をひたすら登り、辛くなってきたなと思う頃に屋上に着く。 

 

展望台の上からの景色はとにかく感動という一言に尽きる。初めて行った時はちょうど新緑の季節で、鮮やかな緑色の絨毯に悠々と雲の影が流れていて、びっくりするほど美しかった。遠く向こうまで続く森を見ていると心が綺麗に洗われていくし、森と湖の国だと実感できた。びゅうびゅうと吹く風が冷たいのに気持ちがいい。日本の綺麗な空気とはなにか種類が違う、なんの混じり気もない透明な空気が全身に当たる。見渡しても森と湖しかないのに、こんなに心が揺れるものなのかと驚いた。スマホアウランコの写真を見るだけでは絶対に得られない体験だった。もしかすると少し若者的思考なのかもしれないけれど、こういう「わかりやすい」体験が私の性格に合っていたのかもしれない。頭のてっぺんからつま先まで、日本の森の中の空気とも違うフィンランドの森の空気を感じながら、静かで美しい景色を見て、肌でも視覚でもフィンランドの自然を存分に味わうことができる、アウランコはそういうわかりやすい体験をくれる自然公園だと思う。

ハメーンリンナ市バス案内

Public transport - Hämeenlinna

アウランコ自然公園基本情報

Aulanko Nature Reserve - Nationalparks.fi

Aulanko Tower | Visit Finland

VR

Welcome on a journey together with us - VR

 

フィンランドを感じる-食事編

フィンランドの料理を一言で言うなら?と訊かれたら私はミルクと答える。フィンランドはカレリアパイやサーモンスープ、ミートボール、ブルーベリーパイなどの定番メニューがあって、どれもベースに牛乳の味がする。パンやクッキーも美味しいけれどやっぱりミルクの風味が強い。滞在中は味についてそこまで意識していなくても、前後や途中で別の国へ滞在すると、フィンランド特有の味付けに気が付く。フィンランド滞在の後にデンマークに滞在した時は、パンのバターの風味が強くて驚いた。フィンランドでどの食事を食べても全体的に優しい味がするのはベースのミルクっぽさのせいではないか思う。それが人によっては口に合っているだろうし、人によっては物足りないと感じるだろう。少なくとも過去のフィンランド旅行で「バターが濃厚」と思った経験はないし、尖った味にもまだ出会ったことがない。

 

フィンランド定番お菓子メーカーFazerも全体的に優しい味で、クセが無くどれも美味しい。特に好きなのはムーミンのビスケットとヴィーガンのグミで、行くと大量買いしてしまう。ムーミンのビスケットは100%ミルク味という感じで口当たりが軽く、箱で買っても一日で無くなる。グミは甘いのに砂糖の痛いような甘さが舌に残らないので不思議だ。定番のチョコレートは勿論どれも美味しい。日本ではあまり見かけないヴィーガンチョコレートも柔らかな味がして、とても美味しかった。

 

ヘルシンキは、街に出ればフィンランドの家庭的な味にどこでも出会う事ができる。カフェやレストランには定番のメニューがあるし、他の北欧諸国同様、魚を注文すれば肉厚で美味しい魚が食べられる。とはいえ日本円で給与を得ている私には、旅行中毎日外食するのは厳しい。特に今はコロナ前と比較するとすっかり値上がりしてしまい(それでも北欧の中では手頃ではあるけれど)、カフェでカフェラテとケーキを注文すれば2000円の世界になっている。直近の旅行では、朝はホテルのバイキング、昼はカフェ、夜はストックマンデパートのデパ地下というルーティーンでほぼ過ごした。ホテルの朝食は大手ホテル系列の経験しかないが、カレリアパイやスモークサーモン、ベリージュースなどフィンランドらしいメニューをどのホテルの朝食でも食べる事ができたし、ストックマンデパートのデパ地下はカフェに比べて安価で、かつ美味しいお惣菜とパンが購入できる。フィンランドは水道水が飲めるありがたい国なので、日本からフリーズドライのパックもいくつか持ち込んだ。それでお昼にカフェでサーモンスープやケーキを食べたら私は十分満足できた。美味しいカフェやレストランは沢山の人が紹介しているのでここでは省略するが、私のおすすめはとにかく天気が良ければ外のテーブルで食べること。青空の下、カフェ・エンゲルの外テーブルで大聖堂をぼんやり眺めながらカフェラテを飲んだ時は、このまま時間が止まればいいのにと心底思った事は記しておきたい。

 

上段写真:maritori(マリメッコ社員食堂)

ヘルシンキ中央駅からメトロHerttoniemi駅下車

https://www.maritori.com/

中段写真:Scandic Grand Central Helsinki

Scandic Grand Central Helsinki | Hotel in Helsinki | Scandic Hotels

下段写真:Café Engel(カフェ・エンゲル)

https://www.cafeengel.fi/

Stockmann(ストックマンデパート) 中央駅から徒歩5分

https://info.stockmann.com/info/stockmann-in-brief-jp/

Fazer

https://www.fazer.com/

フィンランドを感じる-建築編Ⅱ

グッドシェパード教会

フィンランドを代表する建築家の一人にユハ・レイヴィスカが挙げられる。彼の設計したミュールマキ教会はガイドブックにも掲載されるほど有名だが、現在は生憎長い改修期間に入っており見学することができない。ミュールマキ教会と同じく、彼が設計したグッドシェパード教会も光が美しい教会で、ミュールマキ教会と比較すると様々な種類の光の表現を見ることができる。

赤れんが色の床と真っ白な壁が印象的で、幾重にも重なるスリットから陽の光が入る。スリットの間には透明のキューブが積み重なっていて、乱反射した光がスリットを照らしているところもあれば、スリットの背面に色のついたパネルを入れてその色がスリットを照らしているところもあり、白樺の森の中を思わせるような工夫が可愛らしくて面白い。それらを背景にたくさんのペンダント照明が空中を浮遊していて、昼間でも幻想的な雰囲気が漂っていた。私は曇り空の日に訪れたが、天気が良ければまた違った表情をするだろう。屋内にいても光の恵みを感じられるフィンランドらしい教会だと思う。

 

ミュールマキ教会

私がフィンランドという国をきちんと認識し、フィンランドに死ぬまでに行きたいと思ったきっかけがミュールマキ教会の写真だった。大学の図書館でたまたま見つけた本にミュールマキ教会が紹介されており、その美しさに衝撃を受けたのを今でも覚えている。現在は見学ができないが、まだ見学が出来た頃に訪れることが出来た。

写真で見る以上に実際は天井が高く、静かな美しさがある。訪れた時は子供達が寸劇か何かの練習をしていて、パイプオルガンが鳴り響いていた。一緒に見学していた知人が綺麗すぎると言って泣き始めて、その時のことを今思い出しても胸がいっぱいになってしまう。生憎写真をあまり撮れなかったが、とても素敵な時間に訪れることが出来た。

 

私は中学高校とプロテスタントの学校だったので、学校の中に礼拝堂があり教会を訪れた事も何度もあったけれど、美しさを感じても神聖さのようなものをあまり感じた事がなかった。それは日本のジメジメとした湿気や、強烈な太陽の光のせいもあると思う。乾いた空気の中パイプオルガンの鳴り響くミュールマキ教会で子供達が集まっているのを眺めていた時、窓の外の青空から光が差し込んでいるのを見た時、私は初めて神聖とはこういうことかと思った。私たちはネットを通じて色々な場所を見て知り、体験し、感じることができるようになったけれど、その場所に行かないとわかり得ないことがある、ミュールマキ教会はそういうことを教えてくれた。

 

 

グッドシェパード教会(Hyvän Paimenen kirkko)

ヘルシンキ中央駅から67番バス、Vedakärrsvägen下車/2019.8訪問

※グッドシェパードは英語名のようなので、Hyvän Paimenen kirkkoで検索することをおすすめします

フィンランドを感じる-建築編

フィンランドは現代建築が面白い。ヘルシンキ都心部だけでもOodiやAmos Rex、Aalto Studio、Aalto House、テンペリアウキオ教会など…建築やインテリアを学ぶ学生に北欧及びフィンランドは一定の知名度があり、私も昔はフィンランドの建築に憧れている大学生の一人だった。どの現代建築もどちらかといえばシンプルなデザインではあるものの、冬の日照時間が少ないせいか、日光を美しく室内に取り入れようという気概が素人の私にもわかる。建築写真を見るたびに、いつか絶対に行きたいと学生時代から密かに思っていた。

建築の楽しみ方がわからなければ、その建築を設計した人がどのような事を考えその空間を作ったのか、想像しながら歩き回ると少しだけ面白くなる。なぜそこに窓を取り付けたんだろうかとか、そういう簡単な事でいい。そうすると、例えばAalto Studioであれば執務室の天井に照明が一つもついていない事に気が付くはずだ。私が訪問した際は、何の障害物もない白くて広い勾配天井が、窓から入る光によって淡いグラデーションを作っていてとても綺麗だった。そもそも執務室の天井に照明が無いなんて日本ではそう見かけない。机の上は散らかっているのに部屋が随分綺麗に見えるのはそのせい?この天井は狙ってこうしたのかな?なんていうオタクっぽい疑問や興味は湧かないという人も、フィンランドの建築は写真映えするので、ひとまず現地に赴きあれこれ写真を撮っているだけであっという間に時間が過ぎると思う。

 

3度目のフィンランド旅行で訪れたヴィーッキ教会(Viikki Church)は、ヘルシンキ駅すぐそばの中央図書館Oodiや美術館Amos Rexを設計したフィンランド建築事務所JKMM Architectsが手がけており、ヘルシンキ郊外に位置している。「教会」と言われると気後れするという人もいるが、イベントが行われる時間を避けて訪問し、建築を見に来たから見学させて欲しいと中にいたスタッフらしき人にお願いすると、自由に見学させてもらえた。

ヴィーッキ教会は控えめなエントランスの表情と異なり、中は木造の柔らかい空間が広がっている。OodiやAmos Rexと比較するととても小さな建築物だが、中に入った瞬間優しく包み込まれるような温かみのある礼拝堂の雰囲気に、思わず天井まで見上げてしまった。中央の聖職台の背景に大きなブドウの木が描かれており、スリットから入る光がまるでブドウの木を照らしているかのようでとても美しかった。ブドウの木の下に人々が集まるようなイメージなのかもしれない。聖職台から見て右手の窓の外には新緑が広がっていて、初夏を感じさせる一枚の絵のようだった。教会らしい、神聖な清潔感を持たせつつも、人に寄り添うような柔らかい空気が心地良い。ヘルシンキに来ると、公共空間の清潔感に気が付くが、こういった場所を生活の一部として育った人たちが公共を作っているのだと考えればなるほど納得してしまう。

ヘルシンキには、日本では見られないような独特な美しさの教会建築がいくつかあり、中心地と違って人も少なくゆっくり見学することができる。このブログでも今後いくつか紹介したい。

 

JKMM Architects

https://jkmm.fi/

ヴィーッキ教会(Viikki Church): ヘルシンキ中央駅からメトロに乗りSiilitie駅で下車、駅すぐそばのバス停から79番バスに乗りLadugårdsbågenで下車した/ 2023.5訪問

フィンランドに行こうよ

サウナ人気に伴って、フィンランド知名度は確実に上がっていると感じる。10年前、フィンランドが好きと言ってもフィンランドってどこ?という反応が圧倒的に多かった。それが最近は「ああ、フィンランド!サウナね」とフィンランドを認知している返事がもらえる事が多い。それでも旅行の選択肢にフィンランドを入れる人はまだまだ少ないと思う。私の周囲も、サウナ以外にフィンランドに対して具体的なイメージが無いとか、寒い印象が強いので旅行に行ける国のイメージが無いと言う人がいる。

 

フィンランドは南国リゾート地のような開放感もなければ、パリのような華やかさも正直無い。それでも、夏季のヘルシンキに3度訪れた私が感じるのは、日本とは異なる種類の美しい自然と空気、静かな街並み、晴れると一番天国に近いのではないかと思うような青い空、落ち着いた人々が作る穏やかな時間の流れ、そういったものが忙しない東京で縮こまった心をゆっくり綺麗に伸ばして広げてくれる場所、という事だ。

 

勿論、ヨーロッパの中では一番日本に近くて昨今の厳しい状況下でも直行便で行けるとか、時差がサマータイムなら6時間しかないとか、地理的におすすめしたい部分もある。また、日本よりも治安が良いのではと感じるほど、海外旅行における「持ち物を盗まれないように」という緊張感が無く、日本にいる時と同じ感覚で町を歩けるというのも私からすれば旅行におすすめのポイントだ。実際幼い子連れで旅行に来ている家族や車椅子で旅行に来ている高齢の老夫婦も見かけたことがある。

 

何度行っても、もう行かなくてもいいや、ではなくてどうやったらずっとこの場所と繋がっていられるかな、という気持ちにさせてくれる。それくらい私にとって居心地が良く、真っ新な気持ちをくれる場所だと思う。

 

このブログは、フィンランド好きの個人が書くヘルシンキフィンランド旅行記に過ぎない。ただ、フィンランドがサウナやオーロラ、サンタクロースの地という印象で終わるのではなく、実はとても旅行のしやすく実りを得られるヨーロッパであること、少し踏み出せば日本では出会えないような美しい場所に行けることなどを知ってもらえる機会になればと思っている。次どこに旅行に行こうか迷っている人、フィンランドが気になるけど実際何が面白いのかわからない人の参考になると嬉しい。