Finland Travel Diary

フィンランドとその周辺旅行記

フィンランドを感じる-建築編

フィンランドは現代建築が面白い。ヘルシンキ都心部だけでもOodiやAmos Rex、Aalto Studio、Aalto House、テンペリアウキオ教会など…建築やインテリアを学ぶ学生に北欧及びフィンランドは一定の知名度があり、私も昔はフィンランドの建築に憧れている大学生の一人だった。どの現代建築もどちらかといえばシンプルなデザインではあるものの、冬の日照時間が少ないせいか、日光を美しく室内に取り入れようという気概が素人の私にもわかる。建築写真を見るたびに、いつか絶対に行きたいと学生時代から密かに思っていた。

建築の楽しみ方がわからなければ、その建築を設計した人がどのような事を考えその空間を作ったのか、想像しながら歩き回ると少しだけ面白くなる。なぜそこに窓を取り付けたんだろうかとか、そういう簡単な事でいい。そうすると、例えばAalto Studioであれば執務室の天井に照明が一つもついていない事に気が付くはずだ。私が訪問した際は、何の障害物もない白くて広い勾配天井が、窓から入る光によって淡いグラデーションを作っていてとても綺麗だった。そもそも執務室の天井に照明が無いなんて日本ではそう見かけない。机の上は散らかっているのに部屋が随分綺麗に見えるのはそのせい?この天井は狙ってこうしたのかな?なんていうオタクっぽい疑問や興味は湧かないという人も、フィンランドの建築は写真映えするので、ひとまず現地に赴きあれこれ写真を撮っているだけであっという間に時間が過ぎると思う。

 

3度目のフィンランド旅行で訪れたヴィーッキ教会(Viikki Church)は、ヘルシンキ駅すぐそばの中央図書館Oodiや美術館Amos Rexを設計したフィンランド建築事務所JKMM Architectsが手がけており、ヘルシンキ郊外に位置している。「教会」と言われると気後れするという人もいるが、イベントが行われる時間を避けて訪問し、建築を見に来たから見学させて欲しいと中にいたスタッフらしき人にお願いすると、自由に見学させてもらえた。

ヴィーッキ教会は控えめなエントランスの表情と異なり、中は木造の柔らかい空間が広がっている。OodiやAmos Rexと比較するととても小さな建築物だが、中に入った瞬間優しく包み込まれるような温かみのある礼拝堂の雰囲気に、思わず天井まで見上げてしまった。中央の聖職台の背景に大きなブドウの木が描かれており、スリットから入る光がまるでブドウの木を照らしているかのようでとても美しかった。ブドウの木の下に人々が集まるようなイメージなのかもしれない。聖職台から見て右手の窓の外には新緑が広がっていて、初夏を感じさせる一枚の絵のようだった。教会らしい、神聖な清潔感を持たせつつも、人に寄り添うような柔らかい空気が心地良い。ヘルシンキに来ると、公共空間の清潔感に気が付くが、こういった場所を生活の一部として育った人たちが公共を作っているのだと考えればなるほど納得してしまう。

ヘルシンキには、日本では見られないような独特な美しさの教会建築がいくつかあり、中心地と違って人も少なくゆっくり見学することができる。このブログでも今後いくつか紹介したい。

 

JKMM Architects

https://jkmm.fi/

ヴィーッキ教会(Viikki Church): ヘルシンキ中央駅からメトロに乗りSiilitie駅で下車、駅すぐそばのバス停から79番バスに乗りLadugårdsbågenで下車した/ 2023.5訪問